コロナ禍で娘に教わったこと。
それは、なにも特別なことではない。
笑う門には福来る。
だだ、それだけ。
娘は、在胎23週で生まれ、これまでに何度も生死の境をさまよった。
出生児時の体重は、わずか 565g。
生後5日目に脳室内出血を起こして水頭症を発症し、後遺症で脳性麻痺となった。
3度の手術を経て、生後10ヶ月で退院した。
自宅では、数分おきの痰の吸引。
逆流による嘔吐。
その度に、寝具と着衣の交換。
栄養剤の準備とボトルの洗浄・消毒を日に5回。
生活は医療ケアに埋め尽くされた。
あっという間に育児休暇の一年が経過し、やむ無く退職。
よく、社会から取り残された気がすると言う人もいるけど、そんな自分の置かれている状況を考える暇さえなかった。
ただ、娘の容態が悪化しないように気を配り、いつも張り詰めていた。
でも、夫は少し違っていた。
かなり違っていた。
娘の入院中、街では Mr.Children の「常套句」という歌が流れていた。
夫はよくそれを口ずさんでは、娘を思っていた。
“君に会いたい、君に会いたい
なにしていたって 君を想う
君に会いたい、君に会いたい
愛しています”
ただ、純粋に娘を可愛がっていた。
そんな夫には、ときどき救われた。
髄膜炎の疑いで緊急搬送され、医師が馬乗りになり、意識のある娘の背中に太い注射針を刺そうとしている、という場面でも、
待合室で夫は、白目をむいて寝る。
考えても仕方のないことは考えないようにしているのだそう。
それは、今も変わらない。
今、得体の知れないウィルスが蔓延している今日においても、
考えても仕方のないことは考えないようにするのが得策なのではないかと思う。
手洗い、うがい、換気、消毒、除菌、行動制限。
できることをすべてやったなら、
あとはあれこれ考えない。
そして、できれば笑って過ごす。
笑顔の効果はすごい。
娘はよく笑う。
歩いたり、言葉を発したりすることはできなくても、笑うだけで人を幸せにする。
すごもり生活のイライラで、些細なことから夫と喧嘩していると、背後から視線を感じ、振り向くと、娘が笑っている。
何度も言うが、笑顔の効果はすごい。
「負」の感情でいられなくなる。
娘のように自然には笑えないけど、せめて母も口角を上げて、毎日を過ごそうと思う。