当事者部門

「心に特別な友がいること」 大須賀 一樹

僕は、言葉について考えることがとても好きだ。ただ、幼いころから片言も話せなかったため、言語訓練に通っていた。文字で言葉が伝えられることを覚えてからは、言葉での表現に夢中になった。小学時代には、文字での自己表現が一番の楽しみになっていた。

ところが、思春期の頃、何故か向き合えない気持ちになる言葉があった。その言葉を考えると、どうしても障害を強く感じてしまう。それは「友人」とか「友情」という言葉。自分の障害を考えるきっかけになった。

僕の障害は、脳性まひ。生まれつき手足が不自由で発語が難しい。でも、心だけは人一倍自由で何についても考えるのが好きだった。育った環境は、障害を持つ仲間といつも一緒で居心地の良いところばかり。自然な配慮で学びも遊びも経験できていた。仲間は友だちと思っていたし、自分の障害も意識せずにいられた。

そんな特別支援学校生活を過ごしていたが、義務教育が終わる時、自分の進路や環境を考え、寄宿舎のある特別支援校に行くことにした。そこでも、様々な障害を持つ仲間と共に充実した日々を過ごせた。でも、将来を考え始めた時、夢や悩みを語り合えるような「友人」や「友情」に障害という壁を感じた。

進路活動開始の時期が迫り、自問自答を繰り返し、進学する決心をした。希望を胸に勇気を出し、いざ車いすで大学のオープンキャンパスに。だが、そこに待っていたのは、心に刺さる眩しすぎる光景だった。大学周辺で、目に映ったのは同級生の友人同士で歩く姿。親の介助で行くしかない僕は、何だか情けなく思ってしまった。

この先いつまでも、親の介助でどこへでも行こうとは思わないが、行動を共にするような友人ができるだろうかと想像しても、焦るばかりだった。心の中で葛藤を相談もできず、二つのことを心に決めた。「大学進学」と「友人と友情を築く」と。

決意は固かったが、障害を持つ前途多難な僕は、とりあえず行動し挑戦してみようと心掛けた。例えば、「SDGS」を考えるユネスコスクールへの参加、興味のある講演会も聴講に行った。不自由な手を開花させるべく自分のパソコンも手に入れた。受験対策の個別塾にも通いだし、とにかく意欲全開で過ごした。

そんな中で、障害人生に大きな希望を抱けるプロジェクトを見つけた。それは、あるプログラムの選抜。対象者は、病気や障害を持ちながら進学を志す生徒。毎年10名程度が選ばれ、困難を克服するための様々なプログラムが受けられる「スカラー」になる。今の自分の可能性が見つかる予感がし、挑戦するしかないと思った。

僕の熱意が通じたのか、厳しい選抜を通過でき、三か月を経てたどり着いた場所は、想像をはるかに越えた大きな希望と挑戦が待っていた。そして、多様な困難を抱えながらも夢を持った仲間たちと、サポートのスペシャリストとの出会いも待っていた。ここでの初挑戦は五日間の合宿。介助が必要な僕には、I君が同行してくれた。介助があることで可能になる日常生活の体験と習得も課題と教えられた。

I君は、この五日間の克服への時間を共にしてくれた。I君の役目は、依頼がある時のサポートに徹すると教えられていた。しかし、慣れていない僕は、依頼もコミュニケーションも取れず、自分の障害についてさえ伝えきれずにいた。迷う僕を察したのか、I君は「僕は君の手足だと思ってください」とひと言。

このひと言に救われた。お陰で、僕は驚くほど肩の力が抜けて、介助の依頼ができるようになっていった。食事や身支度、行動がスムーズになり、安心してプログラムにも参加できた。特に、学びの場で必要だったパソコンサポートは完璧で、介助の有り難さを知った。

自由時間には、感想を話すことも出来るようになり、僕は夢中になって文字での会話をした。その盛り沢山のハードなプログラムが終了を迎えた時、I君への感謝の気持ちと達成感で、僕の胸は熱くなった。後日もイベント参加などで継続していく予定はあると聞いていたが、I君の介助はもう受けることはないはずと考え、夢から覚める思いが残った。

その後、イベントに参加を続けていく中、イベント案内の企画者にI君の名前を見つけた。僕は、嬉しくてI君に初メールを送った。返信があり、お互いに楽しみな再会となった。ここからは、連絡は途絶えることなく今も続いている。

Skypeで長時間話したり、名古屋への一泊旅行もした。どちらも、簡単ではないことだ。声で話すI君に対して、文字で打ち込む音声の会話。そして、介助の伴う旅行は言い出すのにかなり勇気が必要だった。僕が綿密に企画した旅行に、I君は快諾。僕たちなりのやり方を一緒に考えてきた。

今では、悩みも話せる。いつか見た眩しかった友人同士のように、僕の心に特別な友人がいる。

僕は、障害という壁を越えた友情に出会えた。

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