当事者部門

「きょうだい児の話」 ゆうこ

絆とは「離れがたい結びつき」だそうですね。私には5歳の息子と2歳の娘がいます。色々あるけれど、大事な大事な存在です。

二人とも東京の小児専門病院で治療を続けています。2歳の娘は元医療的ケア児で、15回程の入院を経て現在は心臓の薬を飲んでいます。息子はきょうだい児でありながら、治療の当事者でもあります。

普段から、2年以上複数回の手術や入退院を繰り返して命の危機も何度もあった娘のことに焦点が当てられがちです。近年、きょうだい児支援の輪が広がっていますが、未就学児自身が体験を語るのは少し難しいです。

コロナ禍で意図せず息子と過ごす時間が増えました。そんな時、息子から「僕、ちいさい時楽しいこといっぱいあった?」と聞かれて、胸が締め付けられました。息子が2歳の誕生日の時に行った沖縄旅行や沢山の楽しいお出かけなどを思い出しました。一方で、妹誕生後からは、最近のコロナの制限も含めて約3年間我慢が多い生活でした。今少しずつその不整合を立て直すようにしています。ここでは、このような支援が欲しかったというような主張にはせず、息子がこれまで置かれていた環境を発信することで、問題提起のきっかけになって欲しいと思い、息子目線で作文しました。いびつかもしれないけれど、私達の絆の歴史が伝われば本望です。

***

妹はもうすぐ3歳になるよ。

みんなに抱っこしてもらってるし、僕が遊んでるおもちゃやお菓子は全部奪いに来るんだ。僕も妹のこと大好きだけど、みんな妹のことかわいいってよく言ってるよ。にぎやかな毎日だよ。

僕が3歳の頃は寂しかったな。

ママは妹がお腹にいる時、身体の事情で僕を抱っこすることができなかったんだ。

抱っこだけじゃない。

ママは、妹が生まれて1ヶ月も経たない頃から、妹に重い病気が発覚して、ほとんど入院する妹にかかりきりだった。僕は保育園やマクドナルドハウスやおばあちゃんの家で過ごす時間が増えた。

今まで、僕の病気ことでママは沢山勉強して頑張ってくれてたけど、それも忘れられちゃった。

妹が入院している時は、僕はマクドナルドハウスで、おばあちゃんやパパと過ごしてた。ママが帰ってくるのは、僕が寝るときだけ。しかも、妹は泣くと身体に負担があるからといって、夜の付添交代は、必ず僕も病棟前の家族室まで行かないといけなかった。それに朝は僕がママ行かないでって泣いちゃうからか、朝僕が起きる前にいつも病院に行ってた。妹が手術の時なんかは何日も会えなかったし、長い入院の時は、ママが妹にかかりきりで、僕はパパとおうちで二人で生活したんだ。パパも仕事と慣れない保育園の送り迎えと僕の食事のしたくなどで機嫌あんまりよくなかったな。ママはマクドナルドハウスで会ってもよく泣いていたよ。

チャイルドライフスペシャリストさんという人が病院にいて、僕のためにママと一緒に何度も絵本を作ってくれたのはとても嬉しかったな。

妹が入院すると、ディズニーランドや遊園地にいつも以上に連れていってもらえた。特別だよと沢山おもちゃやお菓子を買ってもらえたよ。

妹が退院するのは家族みんな揃うから嬉しいんだけど、退院直後はパパもママも疲れ切ってて不機嫌なんだ。しかも、ママはまた入院しないようにって妹のケアにかかりきり。僕は妹の入院中ママといれなかったから、ママとずっと一緒にいたくて、保育園何度も大泣きしてお休みしてたよ。だけど、妹の入院が近くなると感染症対策で僕も保育園お休み。けっこう勝手だよね。寂しかったり悲しかったりでよく爪をかんでたら、もう何ヶ月も爪切りしてなかったこともあったよ。

僕の病気の先生は、ママとパパが僕と向き合えるようにと、妹の病気がまだ落ち着いてない頃、僕の入院期間を作ってくれたんだ。いつも妹が病院でママと一緒にいる逆バージョンを体験した。夜眠っている時以外はずっとママが病室で一緒にいてくれた。僕が退院した日に妹が緊急入院するような事件もあったけど、それから、少しずつ、ママは僕の治療も頑張るようになった。

妹の病気が落ち着いた今、ママは昔のように僕の治療を頑張るようになった。前は妹の通院が多かったけど、最近は僕の通院の方が多い。僕の通院の日は、丸一日ママと一緒にいられる。妹はお留守番なのでママひとりじめ。僕のお気にいりの病院のレストランでお子様ランチを食べたり、検査のご褒美にガチャガチャとか好きなもの買ってもらえるんだ。

妹は感染症が原因で心臓が悪くなってしまったらしい。だから、コロナが流行り始めてから、ママもパパもすごくピリピリして、保育園登園もお友達と遊ぶのもお買い物も一時期禁止にさせられたんだ。一部は解禁してくれたけど、まだ旅行や遊園地は連れていってもらえない。お友達の家もダメなんだ。

小学生になったら、お友達と沢山遊べるのが楽しみだよ。

あと、早くみんなで旅行にいったりしたいな。

***

アンリーシュを応援する

アンリーシュの活動はみなさまに支えられています。

いろいろな方法でアンリーシュを応援することができますので、あなたらしい応援のカタチを見つけて下さい。

アンリーシュを応援する方法はこちら

 

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です