当事者部門

「私たちの絆」 Aquarius-B

(注)応募時に無題だった作品は、作文コンテストのテーマである「私たちの絆」をタイトルとしています

仕事は崇高な暇潰しである。暇はおそろしい、持て余すと逆に潰されかねない。

三十年前ひきこもりをやって闇を得た。二十年間培ってきたものが、たった二か月のひきこもりで消えてしまった。昔の自転車の様に漕ぐのをやめたらライトが消えてしまった。色は変わらないが暗い。セピア色のスクリーン一枚を通して見る感じ。

一人バーチャルリアリティー。自分探しのための旅など必要ないし、見つけた自分はろくなもんじゃなかった。

一日何もしなかった夜、風呂に入ると体は固まっている。でも脳はその数倍のスピードで固まってゆく。脳は全てを記憶していて嫌なことばかり思い出す。フラッシュバックではない。常にそこにある記憶を脳内麻薬が緩和しているが、枯渇して来ると露出した傷に触れて痛い。

心的外傷は脳的内傷、夜中にあげる奇声は実は悲鳴だ。ひきこもると自分に目が向くのでそうなりやすい。この世でしてはいけないことのひとつ、死に至る病。
生きるエネルギーは自転車操業で生み出される。

脳にとって家族は殆ど本人と認識される。
鏡を相手に喋っているようなもの。他人と接することがないと脳は回らない。仕事をしていると体を動かせる、会話もある、その上お金を貰える。仕事で生活のリズムを整える。時間になれば嫌でも仕事に出なければならない。仕事の前に部屋を片付けていく。そこで区切りがつく。

休みの間に部屋は悲惨な状態。仕事がなかったら間違いなくゴミ屋敷になっていただろう。
それはまるで私の脳そのものが目の前に展開されているかのよう。

仕事は意味のある暇つぶしである。脳を回すためにわざわざ家を出て、また帰ってきてやり直すことがある。

風呂に入り湯船につかる。シャワーだけで済む人もいるが、私の場合充分温まらないと、血流が悪く脳が回らない。逆もまた真、体を使うことで脳が回る。

古来為政者は様々なピラミッドを造って、労働者に仕事を与えてきた。壮大な暇つぶしであるが、暇に弱いのは知能の高い人類ならではの特性。
同僚、上司、客、仕事はそれぞれストレスになり得るが、リハビリしながらお金を貰えるんだから気楽なもんだ。常に肩の荷をおろしながら、頑張らない姿勢でがんばる。
今回のコロナ騒動で日本人総ひきこもり状態。意味のある「ひきこもり」だからそれ程の被害はないか。

巣ごもりは人間に悪い。ひきこもりよりは幾らかましだが、脳が固まる。
役割を放棄すると舞台から排除される。みんなが演じているのを、傍観しなければならない。初めてのことで影響は計り知れず、答えは出せない。副作用を知らなければ是非も無い。

岡江久美子が死んだのには驚いた。志村けんの場合はまだ必然と思えたが騒動を甘く見た。注目されればホコリの出るコロナ。騒動が無ければ、病院で手当を受け、死なずに済んだかもしれないという思いはねじ伏せて。

すべては脳に帰結される。
脳に辿り着くまでに随分時間がかかってしまった。なぜ心肺機能が落ちるのか、なぜ気分が落ち込むのか、なぜ昔通りにできないのか。完全な鬱状態、視覚障害は一部に過ぎず実際は脳血管障害だった。

調子いい時もあるのでそれに寄せて行こうとするけど、次はうまく行かない。いくら部分を整えても大本の脳で障害されているから、うまく行かない。人のことなら簡単に指摘できるのに自分のことは何も見えない。

情緒的なものではなく、極めてロジカルで物理的でメカニカルな現象。脳を通して見るから風景は個人的なもの。この世には人類の数以上の風景がある。それぞれの風景を持ち寄ってこの世は成り立っている。この世の真の姿を見ることは誰にもできない。

良くも悪くも無意識を意識できるようになった。犯罪者の多くは自らの動機に気づかない。自覚のない透き通る闇があるだけだ。
新聞にのることは明確な理由がある。ムラや無駄や気まぐれを省いてある悪のエリート。世界の明日が見える。
アメリカでは911の揺り戻しでドメスティックバイオレンス。自由の女神の右腕と王冠一個が危ない。アストロノーツメランコリーも起きる。

ドラマと現実、脳にとって価値は等しい。リアルと虚構、人は充分分かっているが脳に区別はつかない。
夢や想像も脳に浮かんだ映像は同じ価値。練りに練った企画・脚本・演出で最高のシチュエーション。父も夫もあるいは自分さえ陥った罠。人と脳とのせめぎ合い。「第一、君がそれを確かめたんじゃないか。」結婚、子供ができてからの純愛探し。

逆もまた真なり。借金で追い込まれる芝居。リアルでそんな状況に陥った場合、負のリロードが始まる。竹内結子の自殺が、役者脳の等価原理によるものかどうかはわからないが、

だとすれば彼女は「結婚と死」に於いて二重の苦しみを味わったことになる。

せめぎ合いに連戦連敗の私。それ以前に我々は「存在」を刷り込まれている。刷り込んだものを知らないし、その「存在」は誰に刷り込まれたのだろう。

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