当事者部門

「先天性心疾患の我が子と内部障がい」 奈木野 綾音

私の娘は2年前の6月、沢山の疾患を抱え産まれてきました。娘の異常に気が付いたのは妊娠14週の終わり4か月頃医師が言葉にした胃の位置が右にあると言う事、通常は左に位置します。臓器が逆にある場合は心臓疾患の疑いもある為17週5か月頃に来て下さいと。

この時エコー診断で心臓の大血管走行が不明と言う事が判明し初めて「命の選択」について告げられました。トリソミーの疑いや最悪お腹の中で亡くなる可能性もあると言う事。17週後半を過ぎている為この産院で診るのは難しく小児循環器に詳しいJ病院を紹介して頂きました。

この時、既に19週を過ぎており再度「命の選択」について決断しなければいけない。私達は、どのような形でも産まれてくる我が子に会いたいと産む事を決断します。

産科の担当医師、小児循環器医師。のちに娘の主治医となる先生方に胎児の心エコーを19、26、32週に渡り詳しく調べて頂き判明した病気は右胸心心室中隔大欠損、肺動脈閉鎖両大血管右室起始症。更に産まれて新たに分かる病気もあると言う事が判明し不安の中、死と隣り合わせの日々が続きます。

唯一の救いはお腹の中で動く我が子の存在と産むと決断した日、産科医師が言葉にした「我々がサポートします 一緒に頑張りましょう」その一言でした。

そして月日は流れ迎えた出産日39週3日2,580gの我が子は小さな産声を上げて誕生し新たに単心室、低位鎖肛内蔵逆位と疾患が見つかりました。

生後3日目に行われた低位鎖肛お尻の穴を作る手術は無事に成功。

心臓は肺動脈が閉鎖している為、代わりとなる動脈管が閉じないよう点滴治療を開始します。ここから生命力の強さが発揮され3回必要だと言われた手術が2回に。約5ヶ月半の入院生活を終えて次の手術まで在宅酸素と言う型で退院を迎えました。

自宅に戻り主治医の勧めの元、小児の訪問看護に特化した事業所の利用を始めます。週に3日自宅に来て頂き退院当初は体重増減、ミルク摂取量、発汗量など心不全兆候がないか丁寧に診て必要に応じて病院の受診有無を判断して頂きました。

中でも怖かったのは風邪。心臓に疾患がある為、重症化しやすく肺炎や呼吸器障がいなど合併症のリスクが高まり基本は自宅で過ごす生活をしていました。

しかし、このまま外の世界と関わりを持たずに過ごして行くのか疑問に思い始めます。そこで5分程度、外の空気を味わい体調面に考慮して公園やスーパーなど
外出する機会を増やし沢山の刺激を受ける事が出来ました。ですが良い事は続かず次第に世間の冷たさを痛感する事になります。ジロジロ見ては指を指し「何の病気かな」「鼻に何かつけてる」「小さいのに可哀想」などの言葉が目立ち始め申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

娘の病気は完治する事がなく生涯に渡り血液をサラサラにする薬を飲み続ける必要があります。今現在は目に見える障がいを抱え外見や人の言葉で悩み酸素が外れた後は「内部障がい」目にには見えない障がいとの生活が待っています。
見える物が全てではなく見えない苦しみを抱え「健常者と障がい者」との狭間で生きて行くと言う事。

私自身10年近く目に見えない障がいを抱え日々の生活を過ごして来ました。海外の薬も使用し慣れるまでは話す事も難しく薬の影響により食欲不振、時には不眠と言った状態で生活を続け身体的精神的にも辛かった記憶が今もなお残っています。
そんな私を側で支えてくれたのは両親ではなく幼い頃から共に過ごした児童養護施設の先生方でした。しかし、ここでの生活は容易ではなく世間から施設の子と関わってはいけないと言われ更に第3者の間違った先入観により語弊が生じます。

「可哀想」だ「もっと家庭に近づけるべき」と制度も変わり普通の家庭で当たり前に行う食事の準備や片付けさえも職員がするべきと。まだ子どもだった私には何も変える事は出来ませんでした。

見える物に重点を置き見えない物が隠れてしまう。当事者の伝えたい思いが伝わらずに埋もれてしまう社会。このような経験を通し「障がい」を1つにまとめて見るのではなく表に出る事の少ない「内部障がい」を抱え悩み苦しむ人が居ると言う事を少しでも多くの方々に知って頂きたく今回この企画に応募しました。

最後に娘は今現在、訪問看護サービスデイサービスを主に活用し過ごしています。誰も想像する事のなかった病気を抱え障がいと共に生きる生活。そんな時、利用している事業所の方が「障がいがあっても出来る事は沢山あるんだよ。諦めなければ動物園やピクニックだって行けるんだよ」と懸命に働きかけて頂き実現する事が
出来ました。

何事も諦めずに一歩一歩進む事で「病気、障がい」と向き合う事の大切さ「挑戦」する事で見えて来る様々な可能性を「諦めない」その心を持って娘と共に生きて行こうと思います。

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