当事者部門

「息子に教えてもらった本当の幸せ」 村山 麿友香

医療的ケアのある息子は照之新と言います。テルは8歳で支援学校小学部2年生。
生まれた時に染色体異常ダウン症だとわかりました。生まれてすぐにたくさんの病気を告げられました。大動脈狭窄症、一過性白血病、喉頭軟化症他………母親である私は、本音、テルを心底可愛いと思ってあげられる余裕はありませんでした。

当たり前の理想の妊婦生活。

お腹の子が愛おしくて仕方がありませんでした。

仕事も休むことなく、妊婦健診も引っ掛かることなく、何事もスムーズにいっているように思いました。なので、テルの誕生は私にとっては180度生活を変えられた気分でした。その生活を受け入れられなくて、何度テルをお腹に戻そうと思ったことか…もちろん戻せる訳はありません。しかし悪阻で苦しい妊婦生活の方が、私にとって、どれだけ幸せだったかと考える日々でした。

でも…

テルは小さな身体を張って、たくさんの事を教えてくれました。

当たり前と思っていた『生きる』の生活が、どんなに大変なことか、どんなに奇跡の集まりなのか。テルが生まれてきてくれたからこそ、感じられる『幸せ』が、たくさんあるのだと教えてくれました。

テルは手術を生まれて8年間の間に3度しています。入院は数えきれません。3歳までは気管支炎、肺炎になりすぐ入院。

RSウイルスも二度なった経験があり、生命をさ迷いました。

1回目は心臓の手術。

付き添い入院中は、一年以上入院しているお友達もいました。皆、小さな小さな管だらけの我が子達を何グラムの体重増量を気にしながら、毎日毎日、外に出ることが出来ない中、必死に育てていました。そして、その時のお友達同士の会話『手術何回で根治する?』

テルはありがたいことに一度で根治する病気でした。そうです。その病院に入院しているお友達は2回3回が当たり前の世界なのです。

2回目の手術は生後8ヶ月目に肺高血圧症になり、心臓破裂寸前、またしても心臓専門の病院にお世話になりました。

気管切開をしなければ二度とICUからは出られない覚悟をして欲しいとのこと。気管切開しました。
親だからこそ本人の希望うんぬんではなく命の生きる選択をしなければなりませんでした。

そして3回目は胃ろうの手術。

8年経ち、今となれば、ファイバー検査で『先天性喉頭狭窄症』と病名が付きましたが、食べる訓練が全く進まず、全く食べてくれず、2歳になってから食べる訓練が進むように胃ろう手術を選択しました。

胃ろうになってから、やっと口に食べ物をいれてくれるようになり、毎日ペースト食を作り、食べる訓練してから、胃ろうに注入。何をやる時も、痩せさせないためにカロリーカロリーカロリーを考える毎日でした。

おかげさまで、テルは胃ろうは閉じることが出来ました。

そしてお座り出来るように、タッチ出来るように、歩けるように………ダウン症の特徴である身体の柔らかさで毎月毎月訓練に通う日々………。毎日毎日吸引吸入医療ケア。

到底フリーランスのリトミック指導をしていた仕事も、出来る環境でもなく、全てリセットに。10年少しずつ少しずつ増えていった150名以上の生徒さん方にも事情を説明して、離れることを決意したのが、がむしゃらにやってきた私にとっては本音相当辛かったです。

けれど………

ありがたいことに、別れもあれば出会いもありました。
そして、テルを通じて繋がれた出会いは今でも強く、そんな私を助けていただきました。

テルとのお友達と四年前、障がい児のためのリトミックを始めるきっかけをいただきました。そして、訪問看護師さんでお世話になったベビーノさんでもリトミックしています。

コロナ禍だからこそ

今は障がい児のお友達のためにオンラインリトミックも始めました。毎月ご参加いただけるお友達も増えて、家から出ることが難しいお友達、長期入院中のお友達のリフレッシュ出来る空間が作りたいと思うようになり、リフレッシュリトミックサロン開催するようにもなりました。

また四年前、テルがいる中、自宅にいらしていただき、受講させてもらったセラピストさんのおかげで、足つぼ師にもなれました。

テルが生まれて、思い描いていた生活とは180度変わりました。

一戸建てを建てるの夢は、お姑めさんにも助けていただきながら、2世帯住宅でお世話になることになりました。

バリバリ夕方まで働いて家庭と仕事は両立!と張り切っていましたが、家族が一番になりました。何より5つ年上のテルのお兄ちゃんが言いました。『今の母さんの方が僕は嬉しい……』

つい仕事で犠牲にしてしまったお兄ちゃんの幼児期が申し訳ない気持ちですが………

テルが生まれてきてくれたからこそ、家族のために生きることがありがたいと感じている毎日です。

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