当事者部門

「私たちの絆」 かくえい

(注)応募時に無題だった作品は、作文コンテストのテーマである「私たちの絆」をタイトルとしています

息子との旅の始まりは2014年の12月師走の下旬。
NICUで様々な治療をして頂き、1年半をかけて退院することができました。
入院中なかなか笑わなかった息子が、家に着いた時万面の笑みを浮かべた。
その瞬間の出来事はしっかり脳裏に焼きついています。

18トリソミーという染色体異常の疾患で生まれてきた息子は、来年(2021年)小学校入学を控えている

ヨーグルトが大好きで、横にいる僕の顔を弄り倒して楽しく笑っている5歳児男子です。
その旅の途中のコロナ禍で、子供と向き合う時間がより増え、日々の成長をしっかり感じられるのが収穫です。

気管切開しているのですが声を意識的に出せる様になったり、名前を呼ぶと振り向いてくれたり1人遊びが上手になったり、また好き嫌いもあるらしくしっかり味を区別したり、以前より少しずつできる事が多くなった気がします。

そんな中で色々感じた事をお話しします。

特別という言葉があります。
誰しも自分の子供は特別。
小学校に入る事となると、医療ケア児あるいは障害児は、特別支援学校に通う事になります。社会的に特別扱いになります。
この言葉をポジティブに捉えると、うちの子供は特別なんだと意味もなく胸を張ってみる。

彼は医療ケア児(呼吸器、酸素投与、胃ろう)ですので、健常児とは発達、外見又育て方が違います。ですので健常児が辿る未来とは少し違いが出てきます。ここが彼ら(医療ケア児、障害児)を特別にするんでしょう。

特別であるが故の障害児のお母さんのお話なのですが、子供と一緒にお出かけすると、
他人の視線が子供に刺っている経験のある親御さんは少なくないと思います。
そのお母さんは、その視線の元に容赦なしに、何見てんの?
とその視線の当事者に食ってかかるそうです。そうするとそっと逃げてしまうらしい。
こちらは特別ですので多少の注目は仕方ないですが、そっと逃げてしまうって少し寂しい。
しかしそのお母さんは口が達者でチャキチャキな方なので、相手がビビって逃げてしまっているのかもしれません(笑)
また可哀想にと言われたりすることがあります。
こちらは幸せ一杯なのに、可哀想に見えるのね。
他人の我々の見え方をこちらがどうこう言えませんが、
何も知らないのに、一方的に可哀想と捉えてしまうあなたが可哀想だと思ってしまいます。

ありとあらゆる生物がこの世に生を受ける事自体、幸運な奇跡だというのに。

出生時、主治医の先生から息子は普通の人の体と比べて地図が違うと言われたのを思い出します。

要するに普通と比べると元が違うという事です。
そんな息子、彼は何か不思議な力で僕らに何かを問いかけてくる。
僕らは彼の問いかけを100%理解できていないが、感じとる事ができる。
そして彼は僕らの言葉や行動の理解が感じられる。
言葉以外のものを感じあいながら地図違いのコミュニケーションが日々少しずつ生まれています。

地図違いコミュニケーションが上手くできるようになって息子とガチで話をしてみたら、
毒舌で超生意気な子だったりして。
またよく笑います。口角を上げてニコッと。笑顔って本当に素晴らしい。
地図違いでも、笑顔は万国共通。そんな笑顔をくれるとこっちまで幸せになるから素敵です。

人間の固定概念というのは恐ろしいもので、凝り固まった考え方又は思い込みという思考が邪魔をして、私は過去に被害妄想的な考えに落ち行ってしまったり、短命の宿命で生まれてきた事を恨んだり、医療ケア児を育てるのは大変だと思い込んでしまっている意識が芽生えたりすることもありました。

しかし単純に愛する子供を育てる。これ以上幸せな事はあるのでしょうか。
この幸せこそ生まれてきてくれた息子に教えてもらった事です。
コロナ禍で改めて家族3人で生活する尊さを感じています。

子供は親を選んで生まれてくるといわれてますが、もしもそれが事実ならば、僕達を選んでくれたのは、息子のファインプレイです。

君をまさに親身に見守る我々召使が2人いて、更にサポートしてくれる心強い医師、看護師さん、療育の先生、また医療ケア児、障害児の子を持つ相談できるご両親達がいてくれる。
彼のファインプレイで始まった旅は、まだ途中です。その途中でのこのコロナ禍。全く想像していなかった事態がやってきた。

しかし普段から感染症の予防、特に冬のインフルエンザなどの予防はしっかり意識してやっている事で幸い今まで息子はインフルエンザには感染していません。
今のところはその予防策を徹底して続けることが大切だと思います。
感染症対策もさることながら、地図違いな息子だけれど一緒に旅をしている訳で、それはハプニングも起こります。

これから先またどんな事が待っているのか、期待と不安が入りまじります。
私が一番大切にしている事は、常に楽しく笑顔が生まれる環境を作っていく事。
楽しければいい。
楽しくなる気持ちと、笑顔は万国共通ですからね。

同じ地図を持っていない息子との旅。
これからも続くのだ。

最後に、医療ケア児として生を受け、少し早く天国に逝った仲間達に心よりご冥福を申し上げます。

こちらからは見えなくても、お空で笑顔で遊びながら僕らを見守ってくれているのではないのでしょうか?

小さな体で出生し、自分の力だけでは生きてはいけない状態でしたが、それが今は5歳になり、名前を呼ぶと振り向いたり、歌を歌うと彼も一緒に声を出したり、僕らが話す言葉を何か真剣に耳を傾けて聞いてくれたりします。
また素敵な笑顔も頻繁に見せてくれます。

これらの成長の証は、僕らにとって特別なものです。

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