当事者部門

「私たちの絆」 にゃんこ

(注)応募時に無題だった作品は、作文コンテストのテーマである「私たちの絆」をタイトルとしています

私が産んだ第二子の男の子は500g…超低体重出生時、23週で産まれた慢性肺疾患のはるちゃんだった。
はるちゃんは在宅酸素療法を24時間行っていて様々な制約がある。

そして私は鬱で子供と長い時間一緒には居られない。

コロナの前は上の子は幼稚園に入れ、はるちゃんは週に2回、児童発達支援に預け、その時間一人で休めるようにしていた。

ケア児を見ていると、少しの体調不良が長期入院となり命に関わったりする。

24時間緊張していると、はるちゃんの小さな体調不良が「また子供を失う危機が訪れるのでは」と猛烈な不安になり、

気づけば情緒不安定の鬱病一歩手前まで精神のバランスを崩していた。

不安になった際に、気持ちを落ち着けるために

長く眠ったり一人部屋で休息を取ったり

症状がひどい時は服薬して休むこともあった。

幼稚園、訪問看護と児童発達支援の協力を得て、コロナの前は夫の仕事中もどうにか乗り切っていた。

そんな中でコロナ禍が始まった。

コロナで幼稚園に「正社員の仕事をしている人以外に預けられない」と言われた。

はじめは「介護は仕事より下ってことなの!?」って絶望して、幼稚園の先生に相談しにいった。

でも…実情は厳しく市の要請もあって幼稚園は休園になった。

「これじゃあ休憩時間が取れない。」と猛烈な不安が襲ってきた。

一人目の健常児の育児の時、誰も頼らなくてノイローゼになった。

母になったのだから、自分ひとりで頑張らなきゃって思って追い詰められて

育児への恐怖で駅のトイレでわめきながら泣いた。

夫は助けてくれなかった。
私も素直に助けてと言えなかった。
今回も一人で奮闘したら、ノイローゼが悪化してしまうと不安になった。

その時第二子のはるちゃんがNICUから退院した時

家にファミリーサポートさんに来てもらったことを思い出した。

医療従事者でもない人が、酸素付きの子供を一生懸命抱っこしてミルクを与え世話をしてくれた。

育児に人の手を借りた私を責めることも全くなかった。

その姿を見て「なんでここまでしてくれるんだろう」って思った。

「こんなによくしてもらって、どうやって恩返ししたらいいかって」

って私達夫婦がいったら

「恩はね、返すんじゃないの。贈るのよ。次の人に贈ればいいの。」

て言われた。

そう言われた時

「素敵な考え方だな」って思った。

同時に「育児で人に助けてもらってもいいんだ。私もいつか誰かを助けたい」って思えた。

二人目の育児で人に助けられた経験は、

小さな成功体験だった。
コロナで幼稚園が休園になった時、それを思い出して
「もしかしたら自分が困ってるってちゃんと伝えたら
今度は夫も助けてくれるのかもしれない」と思った。

私は勇気を出して仕事中の夫に電話した。

「精神的にいっぱいいっぱいで、二人もとても見れない。

育児が怖い。

また育児ノイローゼになっちゃう。一人で家で見る勇気がない。怖い。」と泣きながら沢山話しをした。

夫はちゃんと話を聞いてくれた。

第一子のときに育児ノイローゼになった私を放置した事を悔いてたと話してくれた。

在宅勤務できないか会社にかけあってくれたが在宅勤務はできないという回答だった。

でも知合いに総務の人がいると聞いて、「諦めずにその人に相談してみよう!!」と私が話した。

夫はしぶったが、総務の人にメールをしたら次の日にその人が夫の上司にかけあってくれた。

後輩さんが会社でしかできない夫の仕事を引き受けてくれた。

すぐに在宅勤務が決まった。

物凄くありがたかったし、即座に動いてくれた同期の人に感謝した。

相談して助けてって言ってよかったと思えた。

次ははるちゃんが通う、児童発達支援事業所に相談した。

私の鬱の件を伝えて、できるだけ預かってほしいと相談した。

すごくだめな母親のようで恥ずかしかった。

でも預かりの空きがなく対応できないという事だった。

でも私をだめな母親だとは言わなかった。

「いつでも電話して頼って」と言ってくれた。

優しく話を聞いてくれた。

とても心強かった。

その時なにか許されたような「弱い自分でもいいのかもしれない」と思えた。

次は訪問看護ステーションに相談をした。

訪問看護師さんから、なるべく訪問時は私を別室で休ませてくれるとお話をいただけて

本当に安心した。

「人に育児をまかせて、別室でゆっくりする。だめな母親みたい」…やっぱりそう思ったけど

訪問看護師さんは皆労ってくれた。

周りの人たちを頼らないと、私は生きていけない。

自分が勝手に持っている罪悪感を捨てて本気で人を頼ってみようと思った。

それは他人をもっと信頼してみようって気持ちと同じな気がする。

そして今がある。

4人でずっと家の中にいるけど、楽しい。

パンを焼いたり、庭でプールをしたり穏やかに過ごせている。

私の気持ちも以前より落ち着いた。

コロナは怖いけど世界は怖いものじゃないって今は思える。

「つながろうとする力」と「助けてという勇気」を

はるちゃんに教えてもらえたのかなと思う。

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